年金制度について

■年金制度と障害年金
日本の公的年金制度は、社会保険のしくみを使って、原則20歳から60歳までの人たちがこの制度に加入して保険料を納め、加入者の老齢・障害・死亡(遺族)という事態(保険事故)に対して、「年金」という形でお金を支給し、加入者(対象者)の生活を保障していくしくみです。
現在の制度では、国民年金がすべての国民に共通な基礎年金に加入し、厚生年金、共済年金の対象者は二つの年金に加入する(二重加入)しくみとなっています。支給される年金も同じです。

厚生年金 共済年金
国民年金 国民年金 国民年金
(基礎年金) (基礎年金) (基礎年金)
自営業者・学生など 会社員・公務員などの配偶者 会社員など 公務員など
(第1号被保険者) (第3号被保険者) (第2号被保険者)

■障害年金には
①20歳前や昭和36年3月までに初診日がある病気やけで受給する障害基礎年金
②20歳以降に初診日がある病気やけがで受給する障害基礎年金や障害厚生(共済)年金
③無年金だった方が平成6年の改正で受給できるようになった障害基礎年金があります。
また、
④それまで無年金だった任意未加入に初診のある学生や主婦を対象とした特別給付金があります。

■障害(基礎)年金を受けるには
 受給要件・請求手続き

<障害基礎年金・障害厚生(共済)年金を受けるための条件
(=受給要件)>
●障害基礎年金(20歳前障害の場合)
     (保険料の納付を必要としない=無拠出)

1 初診日が20歳前にあること  (知的障害等、生来性の障害と認定されているものについてはこの限りではない)
2  障害認定日(初診日から1年6カ月経過した日、この日が20歳の誕生日前にくる場合は20歳の誕生日)の状態が、障害等級表に該当する障害の状態であること。
3 2に該当しない場合は、65歳前までに該当する状態になること。

●障害基礎年金20歳以降に初診日がある場合(拠出)
1 公的年金加入中に初診日があること
2 初診日の前日までに保険料の納付要件を満たしていること 加入しなければいけない期間(原則的には、20歳から初診日の属する月の前々月まで)の3分の2以上の期間が、保険料の納付または免除の期間であること。 または、直近(初診日の属する月の前々月から過去1年間)1年の保険料が納付または免除の期間で占められていること(平成28年3月31日までの経過措置)
3 障害認定日(初診日から1年6カ月経過した日、この日が20歳の誕生日前にくる場合は20歳の誕生日)の状態が、障害等級表に該当する障害の状態であること。
4 3に該当しない場合は、65歳前までに該当する状態になること。

■請求手続き
実際の請求手続きには、障害年金裁定請求書と受診状況等証明書、障害年金用の年金診断書(障害ごとに様式がある)、病歴・就労状況等申立書等の書類や戸籍謄本、住民票などが必要です。なかでも年金診断書は重要で障害の状態をきちんと書いてもらう必要があります。 窓口は、障害基礎年金が市区町村の国民年金係など、厚生年金と主婦等、第3号被保険者となっている人は年金事務所、共済年金の方は共済組合となっています。

●無年金だった方が平成6年の改正で受給できるようになった障害基礎年金
現在の年金制度に改正される前の、昭和61年4月1日前に初診日があり、当時の納付要件を満たせなかったために障害年金を受給することができなかった方のうち、現行制度の納付要件(加入しなければいけない期間の3分の2以上が納付または免除の期間であること)を満たしている場合、障害基礎年金(無拠出)が受給できるというものです。 この年金に該当される方は、厚生年金等の加入中に初診日がある場合でも国民年金の障害基礎年金となります。障害の状態(程度)については、①②の年金と同じです。 無年金障害者の救済措置としての年金なので、さかのぼっての請求はできない、所得制限があるなどの制限が加わっています。
無年金障害者の救済措置として、平成17年4月から実施されている制度です。この制度は、長年にわたる障害者団体の運動や学生無年金訴訟(運動)の力によって実現されたものです。 対象となるのは、1986(昭和61)年3月までの任意未加入中に初診日があるサラリーマンの妻等と1995(平成3)年3月までに初診日があり、初診日当時20歳以上で任意未加入中の学生だった方です。 障害の状態(程度)は、1・2級があり、①②の年金と同じです。
金額は、1級が月50,000円、2級が月40,000円です。所得制限があります。 請求窓口は、市区町村の年金担当窓口です。書類や審査のながれは国民年金の障害基礎年金とほぼ同じですが、学生の場合には、学生だったことを証明する書類等も必要になります。

■障害(基礎)年金を受けるには
<受給要件の確認や請求手続> <障害年金受給後の手続き>

<受給要件の確認や請求手続き等を進めるにあたって>
日本の年金制度は、度重なる改正があったため、複雑でわかりにくいものになっています。障害年金の場合は、初診日の時期や受給権発生の時期により納付要件が異なったり、より複雑なものになっています。 また、年金の診断書に障害の状態が適切に表現されていることや初診日等の証明が必要になります。一人ひとりの障害年金について、受給要件を確認したり、治療歴や生活歴、ポイントとなる時点の障害の状態をしっかりおさえ、必要な書類をきちんとそろえるには、医療機関のソーシャルワーカー(精神保健福祉士)や主治医、地域でサポートしてくださる方々の協力が不可欠です。 まずは、ソーシャルワーカーに相談してみてください。手続きを進めるにあたっての手順や内容を整理してくれたり、一緒に必要なことを確認したりして、請求手続きがうまくすすむようサポートしてくれることでしょう。

<障害年金受給後の手続き>

精神の障害は、障害の状態が変化する障害ですので、有期認定といって、1~5年の間の一定期間を区切って障害程度の認定がされます。期間が終わるときは、その前に「障害状態確認届け」を提出してくださいということで、「障害状態確認届け」と書かれた年金診断書が送られてきます。これを提出期限までに主治医に作成してもらい提出してください。

審査の結果がどうだったかは、本人宛にお知らせが届きます。等級に変更がない場合は、はがきが届き、そこに次回の診断書提出年月が記載されています。

■不服の申し立て
障害年金の請求をした結果や障害状態確認届けの結果に対して不服がある場合は、不服申し立て(審査請求・再審査請求)ができます。

H22年1月からは、社会保険庁が解体し、年金業務は日本年金機構が行うこととなりました。これに伴う機構改革があり、審査請求は、全国8ヶ所の地方厚生局内にいる社会保険審査官に行うことになっています。さらに不服がある場合に行う再審査請求は、今までと同じ厚生労働省内にある社会保険審査会に対して行います。

障害の状態(程度)に不服がある場合は、提出した年金診断書をもとに審査されますので、年金診断書の内容を適切に書いてもらうことは非常に大事な問題です。

■無年金障害者の問題
国民皆年金制度であるはずなのに、様々な理由による無年金障害者が存在し、新たに生み出されている現状にあります。行政窓口の教示ミスや援助者の力不足などにより、本来受給できる条件があるにもかかわらず無年金状態に置かれた方々をなくすことと、年金制度の改善や障害者の所得保障実現の取り組みが必要です。 精神障害者は、その特性により、年金制度からこぼれやすく無年金になりやすい方々が数多く存在することから、家族会やつくし会、みんなねっとでもこれらの問題に取り組んでいます。

無年金障害者をなくす会や東京・無年金障害者をなくす会でもこれらの問題に取り組んでいます。

■無年金障害者になる主な理由
 保険料の納付要件を満たせないため 
国民年金の強制加入中に初診日があるが、保険料を納めていなかった。 (申請免除の手続きをとらなかったり、一部免除で残り分の納付をしていなかった場合など含む)
保険料の納付はしていたが、一部滞納期間があり、3分の2要件か直近1年の納付要件が満たせない。
旧制度の納付要件を満たせず、H6年の特例措置にも該当しなかった。
国民年金の任意加入期間中に初診日があるが、国民年金への加入・保険料は納付していなかった。(H3,4月前の学生やS61,4月前のサラリーマンの妻等)
会社が厚生年金の保険料を収めていなかったため、納付要件を満たせなかった。
学生の特例納付期間であるが、特例納付の手続きもせず、保険料の納付もしていなかった。
法律の改正を知らないためにもらえないと思い請求手続きを行って いない。
・障害の状態が軽いために障害(基礎)年金に該当しなかった。
 障害の程度が該当しない。
診断書の書き方に問題があり、障害が実際より軽いと判断され該当しなかった*
障害の状態が変わったのに請求手続きをとらなかった。(事後重症の請求)*
停止された年金の障害の状態が変わったのに請求手続きをとらなかった。(支給停止事由消滅届け)*
・書類の不備・不足等で障害(基礎)年金が請求できない。
初診日の記録やカルテがないため受診状況等証明書(初診日証明)がとれない (カルテの保存期間が経過したので破棄されていたり、廃院等による)
医師が年金診断書を作成してくれない。
・役所の対応・援助者の問題
役所窓口の教示ミス(納付要件や障害名・初診日確認等)
援助者の力不足
医師の理解不足
・制度の問題
在日外国人で制度の対象外とされてきた。
老齢基礎年金の繰上げ請求をした後に障害が発生または障害が重くなった。
初診日主義により受給要件が満たせない(20歳前発病で20歳後初診など)
障害年金の種類と受給要件・年金額などを、添付のように図に要約していますのでご参照お願いいたします。
(文責:「東京・無年金障害者をなくす会」)